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1994年、公正取引委員会は日車協連にどのような注意を行い、助言したか?

24.06.26

 1994年公正取引委員会は、日本自動車車体整備協同組合連合会の各単組と日本損害保険協会が行っていた工賃単価の協議について独占禁止法(第8条1項 一定の取引分野における競争を実質的に制限すること)に抵触するおそれがあるとして、日本損害保険協会に対し警告を行った。公取委は、同協会に被疑行為の排除を求めた一方、当会に注意を行った。その結果、工賃単価は車体整備事業者と保険会社が個社ごとに契約するという現在の運用となり、現在に至る。

 30年という時間のなかで、工賃単価は団体交渉ができないという意識が業界内で醸成され、あたかもそれが常識であるかのように考えられてきた。そのため、今般の団体協約締結に際し、当会が行う組合行為について公取委が独占禁止法の除外と判断したことに、戸惑いを覚える向きも少なからずあろうと思料する。

 そこで、1994年当時、公正取引委員会は当会にどのような注意を行い、助言したのか。その詳しい内容について、1994年 第73号の日車協連ニュースにその詳細が記されているので、ここに再掲するとともに、当会の立場と認識を改めて整理する。

■今も昔も公取委は正しい保険金支払いを求めている

記事を一読すれば分かる通り、公取委は一貫して統一した料金設定になることを戒めていることが分かる。保険会社が出資して作成される指数と、保険会社の集まりである日本損害保険協会が調査した地域相場を前提に工賃単価が決まると、誰もが150万円だと思われる修理事案であっても、日本損害保険協会所属の全保険会社が一緒になって100万円しか算出されない仕組みを作れてしまう。

 本来、被保険者は保険金が足りないのであれば、他の保険会社と契約することで不利益を回避できる。だが、保険会社が指数と工賃単価を握ってしまうと被保険者はそれができなくなる。そのため、日本損害保険協会が事故車整備における競争を実質的に制限しているとみなされたわけだ。
それを象徴しているのが、質疑応答の4つ目にある。

4. 損保業界が決めた「指数対応単価」 について損保と協議することはどうですか。

「損保業界が決めた指数対応単価について組合と損保業界が協議することは、指数対応単価を損保業界が決めていること自体が問題であり、これについて団体間で協議することも当然ながら問題となる」

である。

『指数対応単価(工賃単価)を損保業界が決めていること自体が問題であ』ると言い切っている。

 ぜひ、正しく保険料金を支払う仕組みを維持するために、保険会社に工数の基準(指数)と工賃単価の両方を握らせまいとした、1994年の日本損害保険協会に対して行った警告の意図を汲み取り、今後の団体協約締結に向けた議論に広く活かして頂きたい。

 公取委の団体協約締結に向けた独禁法禁止除外の判断は、時流に則った翻意ではない。常に正しい保険金支払いがなされる市場の体制を維持する意図があり、それは今も昔も一貫している。

 従って、今回の団体協約締結は、最低価格の決定であり、それ以上での取引価格を否定するものではない。加えて今後取り組んでいく工数の研究も、組員に利用を強要するようなことは独禁法に照らし、そのような運用をする意図を当会は持たない。

「独占禁止法の遵守について」

日車協連本部では10月24日付で、公正取引委員会より事業者団体の活動に関し独占禁止法に抵触する恐れがあるとして 「注意」 を受けました。 その措置として10月27日付で傘下の各会員宛に「独占禁止法の遵守について」の文書を送付しましたので、適正な団体活動を行って下さい。

会員殿
日車協連 6-50号
平成6年10月27日
日本自動車車体整備協同組合連合会
会長 丸山憲一

独占禁止法の遵守について

拝啓 時下ますますご清栄のこととおよろこび申し上げます。

さて、早速ですが、 平成6年10月24日付で公正取引委員会より弊業界の修理料金算定状況を調査した結果、 「下記の事項は独占禁止法第8条に抵触する恐れがあるため、今後組合として行動する際には注意するように。」 との 「注意」 がありました。つきましては、標記事項について必要な措置を早急に採るとともに、同趣旨を傘下組合員に対し周知徹底されますようお願いいたします。

また、 貴組合に於いて採られました措置及び周知徹底の状況を平成6年度末までに資料(貴組合の理事会、 担当委員会の議事録、 会報等を以て)を添えてご報告下さるようお願いいたします。

敬具

下記の事項の決定を組合で行っている場合には、独占禁止法違反と判定されますので、理事会並びに担当委員会等で 「破棄」することを議決して傘下の組合員に通知すると共「独占禁止法の遵守」 を周知徹底して下さい。

 また、同様の決定を組合で行っていない場合に於いても理事会並びに担当委員会等で下記の事項を決定しない旨を確認し「独占禁止法の遵守」について傘下組合員に周知徹底して下さい。

1. 組合が、修理料金を算定するに当たって、「指数方式及び対応単価」を用いて算定することを組合 (団体) として決定すること。

2. 損保業界と組合が、修理料金を算定するに当たって、指数方式及び対応単価を用いて算定する際の「対応単価」 を団体間で決定 (協定) すること。

3. 修理料金を算定するに当たって、組合員に対して組合が作成した指数 (工数表等)の使用を強制すること。

4. 修理料金を算定するに当たって、組合で単価 (レバーレート等)及びその目安となるものを決定すること。

<関係法条>

○私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(抄)

(昭和二十二年四月十四日 法律第五十四号)

第三章 事業者団体

本章-全改(昭二人法二五九)

第八条 事業者団体は、左の各号の一に該当する行為をしてはならない。

一 一定の取引分野における競争を実質的に制限すること。

二 第六条第一項 [特定国際的協定又は契約の禁止] に規定する国際的協定又は国際的契約をすること。

三 一定の事業分野における現在又は将来の事業者の数を制限すること。

四 構成事業者 (事業者団体の構成員である事業者をいう。以下同じ。) の機能又は活動を不当に制限すること。

五 事業者に不公正な取引方法に該当する行為をさせるようにすること。

「独禁法上の団体活動について及び具体的な運用について」

独禁法上の団体活動について、また、その具体的な運用について、公正取引委員会と相談しました。 ここで、その内容を質疑応答形式で紹介します。

<公正取引委員会とのQ&A >

1. 損保業界 (損害保険協会自研センタ一) が 「指数」を作成することはどうですか。
「損保業界が指数を作成することは、それにとどまる限り直ちには問題ないが、その利用に当たっては、統一した料金設定につながることのないように注意する」

2. 「指数」 を使用することはどうですか。
「個々の事業者の判断で指数を使うことは可能である。 ただし、組合で指数の使用を申し合わせたり、使用を強制することはできない」

3.講習会で「指数」の使用方法を講習することはどうですか。
「組合が講習会等で、指数の使用方法を講習することは可能であるが、これを契機として、統一した料金設定等カルテルにつながらないよう十分注意する必要がある」

4. 損保業界が決めた「指数対応単価」 について損保と協議することはどうですか。
「損保業界が決めた指数対応単価について組合と損保業界が協議することは、指数対応単価を損保業界が決めていること自体が問題であり、これについて団体間で協議することも当然ながら問題となる」

5.組合で 「工数表」 等を作成することはどうですか。
「組合で工数表等を作成することはそれにとどまる限り直には問題ないが、その利用に当たって、統一した料金設定につながることのないよう注意する」

6. 「工数表」等を使用することはどうですか。
「組合が作成した工数表を、個々の事業者の判断で使うことは可能である。 ただし、組合で使用を申し合わせたり、 事業者に対して使用を強制することはできない」

7. 講習会等で 「工数表」 等の使用方法を講習することはどうですか。
「組合が講習会等で、工数表等の使用方法を講習することは可能であるが、これを契機として統一した料金設定カルテル等につながらないように十分注意する必要がある」

8. 損保業界が作成した 「指数」のデータ(内容)の疑問点を損保業界と組合とで話し合うことはどうですか。
「損保業界が作成した指数のデータ (内容)等の疑問点を組合が損保業界と話し合うことは、それにとどまる限り直ちに問題はないが、話し合いを契機としてその利用に当たって、統一した料金設定につながることのないよう注意する」

9. 組合で組合員の経営実態調査を行い、そのデータを取りまとめ、組合員に周知することはどうですか。
「組合で組合員の経営実態調査を行い、そのデータを取りまとめ、組合員に周知することは、過去の客観的な事実に関わる情報提供にとどまる限り問題はない」

10. 組合で組合員の経営実態調査を行い、レバーレートを試算することはどうですか。
「組合で組合員の経営実態調査を行い、その結果に基づき標準的レバーレートを試算して組合員に示すことは、 これを用いることにより、統一した料金設定等カルテル行為につながるおそれがあるため問題となる」

11.組合で経営指導としてレバーレートの計算方式を検討したり、 講習会等で計算方式の研修等の指導を行うことはどうですか。
「組合で経営指導としてレバーレートの計算方式を検討したり、講習会等で計算方式の研修等の指導を行うことは、それにとどまる限り直には問題ないが、実態に即したデータを用い試算した結果 (標準的レーレート) を示すなど、統一した料金設定につながることのないよう注意する」

12. 組合で仕事を請け負う際のレス率を話し合ったり、その目安となるものを設定することはどうですか。
「組合で仕事を請け負う際のレス率を話し合ったり、その目安となるものを設定することは、標準価格等の決定、価格等の団体交渉による決定などカルテル行為に当たるためできません」

13.組合で修理作業の際に発生する産業廃果物 (バンパー等) の処理費用を顧客から預かることを話し合ったり、費用の目安となるものを設定することはどうですか。
「産業廃棄物の処理には費用がかかっている旨をユーザーにPRすることや処理費用の実態を紹介することにより、産業廃棄物の実情についてユーザーに理解を求めることは問題ありません。 しかし、組合として処理費用を預かることを話し合ったり、目安となるものを設定することはできません」

14.組合で外注作業等 (ガラスの脱着等)の貨率を話し合ったり、 その目安となるものを設定することはどうですか。
「組合で外注作業等 (ガラスの脱着等)の貸率を話し合ったり、 その目安となるものを設定することは、 標準価格等の決定、 価格等の団体交渉による決定などカルテル行為に当たるためできません」

15. 組合で統一した様式の見積書を作成することはどうですか。
「組合で統一した様式の見積書を作成することは、具体的な取引条件を制限する内容のものではなく、かつ組合員にその使用を強制しないものであれば、問題ありません」

16.組合の講習会等で見積書の使用方法等を講習することはどうですか。
「組合で講習会等で見積書の使用方法等を講習することは、組合員にその使用を強制しないものであれば問題ないが、 具体的なデータを用い試算した見積りを示すなど統一した料金設定につながることのないように注意する」

17.組合で会員工場の請け負った仕事の見積り業務を代行する (見積書の作成を代行する)ことはどうですか。
「組合で会員工場の請け負った仕事の見積り業務を代行する(見積書の作成を代行する)ことは、標準価格等の決定、共通の価格算定方式の設定による価格決定に当たるおそれがあるためできません。 見積りは個々の事業者が独自に作成するものです」