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国交省、「自動車整備事業における適正取引の推進について」を通達

24.07.23

元請け事業者による一方的な価格設定や過大なレス率について悩んでいる事業者には朗報だ。
 国土交通省は5月13日、日本自動車工業会、日本自動車販売協会連合会、日本自動車整備振興会連合会に対し「自動車整備事業における適正取引の推進について」通達を行った。
 これは、自動車整備業が、公正取引委員会の特別調査において、労務費の転嫁率が低い事業者の割合が対象の39業種中で最も多い結果となった事を受けたもの。

 通達の内容は次の通り。

1.労務費指針に沿わないような行為をすることにより、公正な競争を阻害するおそれがある場合には、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(昭和二十二年法律第五十四号)及び下請代金支払遅延等防止法(昭和三十一年法律第百二十号)に抵触する恐れがあること。

2.下請事業者に対して、親事業者が自己の一方的な都合により契約で定めた対価の減額を行うこと、一方的に著しく低い対価での取引を要請する等の行為をしないこと。

3.
下請事業者に責任がないにもかかわらず、親事業者が一律に一定比率で単価を引き下げて下請代金の額を定める等の行為をしないこと。

 つまり、元請けが下請け企業に対し、一方的な値引き要請や、下請け代金の額を定めるようなことを行った場合、独禁法や下請法に抵触するおそれがあると警告している。

 実際に、下請法違反の指摘を受けた事例を挙げると、2008年に大型車の販売を手掛ける近畿日産ディーゼルは、トラックへの部品の取付けに係る製造及びトラックの修理委託に関し、「レス」と称して下請代金の額に一定率を乗じて得た額を当該下請事業者に支払うべき下請代金の額から差し引くことにより下請代金の額を減じていた例がある。

 このほか、元請け事業者による一方的なレス率の設定だけでなく、ディーラーオプションのエアロパーツやガーニッシュをカタログに掲載された工賃しかカーオーナーから貰っていないと言った、元請け側の一方的な理由で、下請け事業者に押し付ける行為や、リース車両の整備作業で作業単価について、下請け企業が現状の単価では厳しいと訴えても聞く耳を持たないような場合などが考えられる。

 値引きは、元請け事業者が一方的に決めるのではなく、あくまで下請けの事業者が自発的に行ったものでなければならない。こうしたやり取りは、言った言わないで水掛け論にならないよう、契約書など書面で記録を残しておくなどの配慮も重要となる。

 業界のレス率は、一時期に比べ低くなったが、現在でも下請け仕事の場合工賃の20~30%レスは当たり前のように行われている。単純な比較が難しいものの、たとえば不動産売買の仲介手数料は売却価格が200万円以下の部分は5%、200万円を超えて400万円以下の部分は4%、400万円を超える部分は3%と決まっている。
 他業種とも比較しながら、車体整備事業の下請け代金のあり方を改めて見直す時期に来ているのではないか。
 なお、当通達が日本自動車車体整備協同組合連合会に対して出ていないのは、元請け事業者に対する注意喚起であるためだ。当会組合員には、通達の主旨を理解したうえ、適正な価格転嫁に活かしてほしい。