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自動車保険参考純率5.7%引き上げの資料があまりに酷い件

24.07.24

 損害保険料率算出機構は6月28日、自動車保険料金の目安となる参考純率を平均で5.7%引き上げると発表した。車両の高性能化による修理費の高額化と、近年の急激な物価上昇による修理費の上昇が影響したとしている。

 引き上げとなった背景について、同機構は別紙で詳しく報告しているが、この内容について、疑問を禁じ得ない。普段、車体整備事業者に根拠、根拠と喧しいが、いざ自分たちが説明する立場になった途端、客観性に欠けるデータを提示していると非難されても仕方がないレベルのものだからだ。

 図1の「支払い1件あたりの修理費の推移」は【対物賠償責任保険】の数値だが、図2の「自動車部品の高性能化事例と部品別の平均修理費」は【車両保険での修理事案の見積りデータを集計した】ものとなっている。なぜ、異なる支払い費目から引用したのか。両方とも対物賠償ないし車両保険に合わせるべきではなかったか。

次に、調査期間と部品代と工賃を示したグラフについて。2021年度と2023年度を比較しているが、2021年度は12月~3月の4か月分、 2023年度は通期の集計値としている。なぜ、2021年度だけ4か月分のみとしたのか説明がない。さらに、参考純率引き上げの主要因について部品代と塗料代としておきながら、工賃を掲載する積極的な理由が見えてこない。グラフの見せ方も全体的に工賃の引き上げ幅が部品代と比較して低いものが多いが、その割に工賃側のグラフの高さに差が付いているものが多く、工賃の上げ幅が必要以上に強調されているようにも見える。

 今、当会が同機構の会員である大手損害保険会社と、自動車保険を利用した事故車修理における工賃単価引き上げについて話し合いが行われていることを知らないはずはない。今回の保険料金の引き上げの背景に、工賃の値上がりがあると主張しているようにも受け取られかねないデータの提示は厳に慎むべきではなかったか。反対にもし、工賃がおもな要因であったならばその旨を正面から書き記すべきではなかったか。

しかしながら、同機構が今般の料率改定の背景を、部品代の値上がりと、塗料代の上昇によるものと分析していることに異論はない。

 たとえば、部品代は2018年から2022年までの統計において、支払い全体の42~43%を占めるもので、なおかつ毎年3%前後の高い伸び率を示している。支払い全体の4割を占めるものが毎年3%増えているということになるので、価格情報の背景の主因とするには充分だろう。

 一方、塗装費はほぼ横ばいで来ているにも関わらず、値上げの要因としてあげられた背景には、ここ数年塗料メーカー各社が輸入する原材料価格の高騰と為替の影響から、自動車補修用塗料の値上げを頻繁に行っており、その影響があったとみられる。全体の費用が伸びていないのは、事故の規模そのものが小さくなったものと考えれば説明がつく。

 それでは、事故そのものが小さくなったとするならば、工賃が2022年に3%以上増えているのはおかしいように見えるが、これは『運転支援システム再設定・調整指数』が指数として新たに設定されたためと考えられる。もちろん、それ以前にも衝突被害軽減ブレーキなど先進安全装備の調整作業は存在したが、指数として設定されたのはこの年の10月である。指数設定として正式にルール化されたことで、計上の精度が上がるなどしたことが関係しているものと考えられる。