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自動運転レベル4、ついに実現か米AI企業テンサー、ロボカーを来年納品予定

25.09.03

米国のAI企業テンサーは、世界で初めて個人が所有できる完全自動運転車「テンサー・ロボカー(tensor robocar)」を発表した。従来の自動運転技術がロボタクシーなどのフリートサービス向け(企業や団体向け)に開発されてきたのに対し、この車両は個人所有を前提に、ゼロから設計されている。納車は2026年後半から、アメリカ、ヨーロッパ、アラブ首長国連邦(UAE)の市場で開始される予定だ。

ロボカーは、特定の承認済み区域内であれば、運転手の監視なしで完全なレベル4の自動運転が可能。区域外では、運転手が手動運転または運転支援機能を利用できる。車両の骨格は、2つの高精度ダイキャスト部品から構成され、軽量でありながら高い剛性を実現している。外装は滑らかな液体金属をイメージし、センサーが統合されたゾーンが組み込まれたデザインで、AIの視覚を最適化するよう工夫されている。

車両には、100個以上のセンサーが搭載されている。高性能のLiDAR5基、超高解像度カメラ17台、Tri-novaハイパーレーダー6基、外部マイク4基など。これらのセンサーには、ミニワイパーや格納式ノズル、超高圧ポンプを備えた自己清掃システムが搭載されており、センサーの性能を常にクリアに保つ。

車載スーパーコンピューターは、自動車用途として強力な8,000 TOPS(Tera Operations Per Second 1秒間に何兆回処理できるか)以上のGPU性能を誇り、10個のGPUと144個のCPUコアを搭載。毎秒53ギガビット以上のセンサーデータを処理する。

これまで、レベル4自動運転は特定地域でのフリート運用(企業や団体が所有する)が主流だった。ホンダのレジェンドが限定的ながらレベル3を実現したものの、一般ユーザーへの販売は実現しなかった。テンサーの今回の発表は、自動運転技術の社会実装を、業務用から個人向けへと一気に加速させるものとして、業界に大きな衝撃を与えている。価格は未発表だが、可処分所得の高いアーリーアダプター層からの関心を集めることは必至だろう。

車体整備事業者として見た場合

車体整備事業者の目線でみたとき、骨格がたった2つのダイキャストで製造されれているところが気になる。事故に見舞われた場合、細かい部品供給が期待できないことが予想される。細かい車体部品がないと、小さい事故でも交換範囲が大きくなり、それに伴って修理費も高くなるだろう。

加えて、100個以上もあるセンサーの校正だ。一般に車両の運行状況を監視するセンサーは車両の外側に設置される。同車の場合、ルーフ部、バンパーの裏側、フェンダーなどに設置されていると考えられる。これらも事故をした場合、脱着取替に伴ってセンサーの0点位置の再学習などが必要となるだろう。現代の一般的な整備技術では、走行しながら自動で学習するか、ターゲット設置して認識させるかのどちらか、あるいは両方となる。当然センサーの数が多いほど作業も増える。事故車整備を行うケースを想像すると費用が嵩む車両になると考えられる。

最後に、いよいよ完全な自動運転が現実味を帯びてきた。自動運転中の事故はドライバーにその責任はない。事故の責任はカーメーカーか、整備を行った整備事業者ということになる。我々も自動運転社会に向け、正しく整備した経過と結果を保存し、もしもの事態に備える準備を進めていきたい。