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垣根を越えた「共創戦略会議」開催 大阪府自動車車体整備協同組合青年部が企画、あいおいニッセイ同和損保と意見交換

25.11.06

国交省ガイドラインで「透明性」が新基準に、業界課題の解決は道半ば

自動車整備業界と損害保険業界が、ビッグモーター社の不正請求問題などで失われた信頼の回復を目指し、企画された。この取り組みは、大阪府自動車車体整備協同組合青年部が企画し、あいおいニッセイ同和損害保険が賛同 して実現。協定に関わる情報や知識の共有などの座学とQ&Aセッションで行われた。

会議は1021 、TKPガーデンシティ PREMIUM 大阪梅田新道にて開催され、保険会社を招き意見交換した。本研修会は、従来の「保険金を支払う側」と「修理を請求する側」という利害構造の垣根を越え 、消費者にとって何が最善かという一点に焦点を当てて互いに意見交換を行った

求められる「エビデンス」徹底—不正防止の砦


前半の座学では、あいおいニッセイ同和損害保険より、業界の信頼回復に向けた喫緊の課題は、不正請求を根絶するための「作業の透明性確保」にあるとし、あらためて国土交通省が2024年3月に公表したガイドラインの内容を振り返った。そのなかで、車体整備事業者に「作業工程ごとの情報の記録・保存」や「消費者等への適切な説明と了承の取得」が損保との連携において重要であるとした 。

特に、保険会社が支払いを承認するための正当な根拠として、修理工場に対し、**客観的なエビデンス(証拠)**の撮影と保管の重要性を訴えた。保険会社は支払いを拒否しているのではなく、支払うための正当な根拠を求めている とし、理解を求めた。

特に記録する写真については幾つか気を付けるべき点が紹介された。主だったものは下記の通り。

  • 作業前: ナンバープレートを含めた車両全体の撮影(フロント損傷時は5方向、側面損傷時は3方向)に加え 、損傷部と目線を合わせてスケールを入れるなど、変形や損傷範囲を正確に捉えることが不可欠 。凹みや歪みは、蛍光灯などの映り込みを利用すると分かりやすい 。車検証や警告灯の表示画面といった関連資料も写真で記録する 。
  • 作業中: 不正行為(例:パテを塗ってすぐ拭き取る)を防ぐため 、**板金パテやプラサフを「研いだ後」**の状態 を撮影することが極めて重要である 。フレーム修正を行う場合は、修正機への固定方法(クランプ位置)や引き方向がわかる広範囲の写真を記録する 。
  • 作業完了後: 交換した部品を並べて撮影し、新旧部品を同一画角に収めることで、交換の事実を明確に立証する必要がある 。ガラス交換時は、新品の純正ガラスを使用したことがわかるように撮影する 。

これらの記録は、顧客への説明責任を果たすだけでなく 、修理費用を巡る訴訟リスクが増加する現状において 、法的なトラブルに備えるための防御策となる。データは数年単位で保存することが推奨されている 。

Q & A編、未解決の課題—修理工場の負担と収益圧迫

一方で、修理業界が長年抱える構造的な問題については、明確な解決の道筋が見えていないものの、損保のアジャスター側の見解や立場、車体整備事業者側の見解が示され活発な意見交換が行われた。

1. 全損案件の「分解作業費用」問題

全損の可能性がある案件で、正確な見積もりのために分解作業が必要になった際の費用について、保険会社は「支払えない」とのスタンスを維持した 。保険会社の支払い基準は、発生した損害そのものを賠償する「不法行為」(民法79条)に基づいており 、分解作業は「損害の調査」にあたるため、直接の賠償対象外と見なされる 。

結果として、現状では修理工場側の無償協力に頼らざるを得ない状況が続いており 、工場側は受注に至らない作業に対して一方的にコストと時間のリスクを負っている。この点に対し、参加者からは、無償サービスが常態化している業界の現状を変え、見積もり作成費用を顧客に請求する新しいスタンダードを作るべきだとの提案もなされた 。

2. 自研センター「作業指数」の乖離

自研センターが定める作業指数と、実際の作業工数との乖離は業界の長年の課題として認識されている 。修理工場側からは、リアマフラー交換の指数が現実的ではない(0.20程度) 、バックドア交換の工賃がガラス交換単体よりも低く設定されていることが多い など、具体的な乖離の事例が指摘された。

保険会社は、指数の妥当性そのものを調整することは難しいとしつつも 、工場の設備や作業者の経験年数など「一定の条件下」 から外れるケースについては、都度アジャスターへの個別相談を推奨した 。指数が実作業を検証せずに機械的に算出されているのではないかという不満も示された。しかしながら、保険会社が指数を作成しているものではないため、互いの立場を伝えるにとどまった。

3. 新品部品の「不具合工賃」の責任

取り寄せた新品部品にピンホールや傷などの不具合があった場合、修正や再塗装にかかる追加工賃の責任の所在も不明確であると指摘された 。保険会社は、これをメーカーが保証すべき問題とし 、事故の損害を補償する保険会社の支払い対象とは異なるという見解を示した 。しかしながら、納期や代車の日数などの諸問題から、車体整備事業者が瑕疵のある新品部品を手直しして作業せざるを得ない場合の課題は残された。

技術とコストの適正化—最小単位での修理へ

信頼回復の具体的な手段として、修理方法の適正化とコスト低減に向けた技術共有も行われた。

  • ヘッドライトのレンズ交換: 高額化するヘッドライトはユニット交換で30万円、周辺部品を含めると修理代が100万円を超えるケースもある 。トヨタの正規修理方法としてレンズ交換が認められており 、アッセンブリー交換よりも安価に修理が可能である 。技術習得は必須であり、KTC製の専用ツール(定価1万4000円程度)が推奨された 。
  • 新冷媒(R1234yf)の取り扱い: 新冷媒は非常に高価で 、規定量(例:850g±10g)を正確に充填するため専用の回収充填機と精密な作業が必須となる 。フロンガス代の請求は、缶の数ではなく、回収充填機で計測した適正量分をg単位で請求することが妥当であるとされた 。
  • 部品の再使用: ドアのウェザーストリップなど 、損傷がない再使用可能な部品が手間を理由に交換されているケースが見られる。高価な部品は積極的に再使用することが推奨され 、クリップの破損を減らすためにプラスチック製のクリップリムーバーなどの適切な工具を活用する方法が提案された。しかしながら、ツールの導入の効果について車体整備事業者側は懐疑的で、ウェザーストリップの交換を選択する車体整備事業者は依然として少なくないものと考えられる。

業界の未来と共存

保険会社と修理工場は、業界の逆風を「大きなチャンス」 と捉え、今後、継続的な対話と相互理解を深めていくことを確認した 。特に、顧客本位の観点から透明性の高い業務プロセスを構築し、協力体制を築いていくこと が、顧客に選ばれる修理工場となるための鍵であるというビジョンが共有された。

この合同研修会は今後、年1回の継続的な対話の場として開催することが決定している 。次なるステップとして、損害保険ジャパンとの合同研修を令和8年(2026年)24日(水曜日)17時から2時間で予定しており、課題共有と相互理解の深化を目指す 。