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下請法改正で取引適正化へ!車体整備事業者の皆様へ「取適法」のポイントを解説

25.12.19

(令和8年1月1日施行)

2025年5月23日に公布された「下請代金支払遅延等防止法及び下請中小企業振興法の一部を改正する法律」(令和7年法律第41号)により、従来の**「下請法」「中小受託取引適正化法」(取適法)**へと名称が変更され、令和8年1月1日から施行・適用される

小規模・零細事業者が主体の車体整備業界においても、元請けの整備事業者や同業者間での取引の適正化を図るため、この改正のポイントを理解することが重要だ。


名称と用語の変更点 

今回の法改正に伴い、一部の名称と用語が見直された 。

旧名称新名称
下請法中小受託取引適正化法 (取適法
下請事業者中小受託事業者
親事業者委託事業者
下請振興法受託中小企業振興法 (振興法)

取適法の適用対象となる取引 

車体整備事業者の主な業務は、物品の修理を請け負う事業者がその修理を他の事業者に委託する**「修理委託」、または物品の修理に必要な部品・原材料の製造を他の事業者に委託する「製造委託」**に該当する可能性が高い 。

1. 修理委託

  • 類型1: 物品の修理を請け負った事業者が、修理行為の全部または一部を他の事業者に委託する場合 。
    • 想定例: 元請けの整備事業者が請け負った事故車の**修理作業の一部(板金・塗装など)**を、別の車体整備事業者に委託する場合。
  • 類型2: 自社で使用する物品を自社で修理している事業者が、その物品の修理行為の一部を他の事業者に委託する場合 。

2. 製造委託

  • 類型3: 物品の修理を行っている事業者が、その修理に必要な部品または原材料の製造を他の事業者に委託する場合 。

3. 特定運送委託(改正により追加)

  • 修理を請け負っている事業者が、修理発注者に対する物品の運送の全部または一部を他の事業者に委託する場合 。
    • 想定例: 修理を完了した自動車を引き渡す際に、その運送を他の事業者に委託する場合 。

さらに、ADAS(先進運転支援システム)搭載車の整備において、車体整備事業者同士でASVのカメラセンサーの校正(エイミング)を委託・受託する取引は、**「役務提供委託」**に該当する可能性がある 。


取適法の適用基準の拡大(従業員基準の追加)

今回の改正で、適用対象となる事業者の基準に、従来の資本金額等による基準に加え、新たに**「従業員基準」**が追加された 。これにより、規制及び保護の対象が拡充される

従業員数5~6人程度の小規模・零細事業者が主体の車体整備業界においても、この従業員基準の追加により、取引を委託する事業者が「委託事業者」に該当しやすくなり、取引の保護を受ける「中小受託事業者」の範囲も広がることになる 。

  • 製造委託・修理委託・特定運送委託の場合、委託事業者の常時使用する従業員が300人超であれば、従業員300人以下の事業者への委託が規制対象となる 。
  • 役務提供委託の場合(プログラム作成、運送、物品の倉庫保管、情報処理に係るものを除く)、委託事業者の常時使用する従業員が100人超であれば、従業員100人以下の事業者への委託が規制対象となる 。

特に注意すべき禁止行為(一部改正点)

委託事業者は、中小受託事業者の利益を不当に害する11の禁止行為が定められており、たとえ中小受託事業者の了解があっても、これらに触れる場合は違反となるため注意が必要だ 。

特に今回の改正で追加・強化されたポイントは以下の通り。

1. 協議に応じない一方的な代金決定の禁止 (改正により追加) 

中小受託事業者から価格協議の求めがあったにもかかわらず、協議に応じなかったり 、必要な説明や情報の提供をせず、一方的に代金を決定することが禁止される 。

  • 想定例: 原材料価格や燃料費の上昇に伴い、中小の車体整備事業者が代金引上げの協議を求めたにもかかわらず、元請けがこれに応じず、一方的に代金を据え置く行為 。

2. 手形払等の禁止 (改正により追加) 

代金の支払手段について、手形払が禁止される 。また、電子記録債権やファクタリング等の一括決済方式についても、支払期日までに金銭を得ることが困難なものは禁止される

3. 報復措置の禁止 (改正により追加) 

委託事業者の違反行為を公正取引委員会、中小企業庁、または事業所管省庁に知らせたことを理由に、取引数量の削減・取引停止などの不利益な取扱いをすることが禁止される 。これにより、中小事業者が違反事実を情報提供しやすい環境が確保される 。

4. 遅延利息の対象に減額を追加 (改正のポイント)

中小受託事業者に責任がないのに代金の額を減じた場合、減額を行った日または受領日から60日を経過した日のいずれか遅い日から、減じた額に対して遅延利息(年率14.6%)を支払う義務が新たに追加される 。


お困りの際はご相談を

改正内容の詳細や取引に関するお悩みは、公正取引委員会または中小企業庁の相談窓口で受け付けている 28。また、「独占禁止法相談ネットワーク」(最寄りの商工会議所・商工会に設置)や、「下請かけこみ寺」(公益財団法人全国中小企業取引振興協会が運営)でも相談が可能だ 29下請かけこみ寺 相談用フリーダイヤル: 0120-418-618